鹿谷会計/鹿谷総研

ケース3 住宅ローン控除がある場合

顧問先からの質問 ふるさと納税は、上限額以内なら自己負担額が2,000円以内になると聞いていました。 ところが、本ソフトが表示した上限額65,000円を寄附すると、 自己負担額が11,081円になります。計算が間違っているのでしょうか。
ふるさと納税_住宅ローン控除がある場合のシミュレーション結果

1. 数値例と計算結果

営業等の所得3,000,000円で、住宅ローン控除可能額280,000円を適用する例です。 この例では、住民税の特例控除額の20%上限によって、制度上の上限額が決まります。

計算に使用した主な金額 金額・割合
営業等の所得 3,000,000円
基礎控除(所得税/住民税) 1,040,000円/430,000円
寄附前の課税所得(所得税/住民税) 1,960,000円/2,570,000円
住宅ローン控除可能額 280,000円
寄附前に実際に使われる住宅ローン控除額(所得税/住民税) 98,500円/97,500円
寄附前の住宅ローン控除後の所得税等 0円
住民税の特例控除割合 79.790%
制度上の上限額(1円単位の計算値) 65,792円
本ソフトが表示する上限額(千円未満切捨て) 65,000円
寄附額 所得税等の減少 住民税の減少 税金の減少額合計 自己負担額
65,000円 0円 53,919円 53,919円 11,081円

自己負担額は、65,000円-53,919円=11,081円です。 住民税の寄附金税額控除56,569円から、住民税で使われる住宅ローン控除の減少2,650円を差し引いた 53,919円が、住民税そのものの減少額です。 本ソフトの上限額は、法令上の控除上限から求めた金額であり、 自己負担額が2,000円以内に収まることを保証する金額ではありません。

<ふるさと納税上限額/自己負担額 シミュレーション結果の帳表>
ふるさと納税上限額/ふるさと納税自己負担額|シミュレーション帳表

2. 会話で確認

顧問先 上限額65,000円より多く寄附していないのに、 なぜ自己負担額が2,000円を超えるのですか?

鹿 谷 この例では、寄附金控除によって住宅ローン控除前の所得税は少なくなります。 しかし、その分だけ実際に使われる住宅ローン控除額も少なくなるため、 住宅ローン控除後の最終的な所得税等は0円のままです。

顧問先 寄附金控除そのものが使えないということですか?

鹿 谷 いいえ。65,000円を寄附したときの寄附金控除額は63,000円です。 住宅ローン控除前の所得税は98,500円から94,850円へ少なくなります。 ただし、実際に使う住宅ローン控除額も98,500円から94,850円へ少なくなるため、 最終的な所得税等は寄附前も寄附後も0円です。

顧問先 65,000円は、本当に制度上の上限額以内なのですか?

鹿 谷 はい。1円単位の計算値は65,792円です。 本ソフトは千円未満を切り捨てて65,000円と表示しており、 この金額は住民税の特例控除額の20%上限以内です。

顧問先 所得税等が減らない分は、住民税で補ってもらえないのですか?

鹿 谷 住民税の寄附金税額控除は56,569円です。 ただし、住民税で使われる住宅ローン控除が97,500円から94,850円へ2,650円少なくなります。 そのため、住民税そのものの減少額は53,919円です。 所得税等の減少額は0円なので、寄附額65,000円との差額11,081円が自己負担額になります。

顧問先 住宅ローン控除がある人は、必ず同じ結果になりますか?

鹿 谷 いいえ。寄附後も住宅ローン控除後の所得税が残る場合は、 寄附による所得税等の減少がそのまま残ることがあります。 税額控除が所得税の減少分を全部吸収する場合と、一部だけ吸収する場合を分けて確認します。

顧問先 住宅ローン控除以外の税額控除も確認が必要ですか?

鹿 谷 はい。複数の税額控除を適用した結果、寄附前後の最終的な所得税等が変わらない場合は、 同じ考え方で確認します。 控除の順序、上限、住民税での取扱いは種類ごとに異なるため、最終税額で判断します。

3. ずれが発生する流れ

順序 確認内容 この例の結果
1 寄附金控除額を求める 65,000円-2,000円=63,000円
2 住宅ローン控除前の所得税を計算する 98,500円から94,850円へ3,650円減少
3 実際に使う住宅ローン控除額を計算する 98,500円から94,850円へ同じ3,650円減少
4 住宅ローン控除後の所得税等を比べる 寄附前0円、寄附後0円のため減少額0円
5 住民税の寄附金税額控除を計算する 基本分6,300円と特例分50,269円の合計56,569円
6 住民税で使われる住宅ローン控除額を比べる 97,500円から94,850円へ2,650円減少
7 最終結果 住民税は53,919円減り、自己負担額は11,081円
寄附金控除によって住宅ローン控除前の所得税が少なくなっても、 実際に使われる住宅ローン控除額が同じだけ少なくなれば、 住宅ローン控除後の所得税等は少なくなりません。 また、住民税の寄附金税額控除が56,569円生じても、 住民税で使われる住宅ローン控除が2,650円少なくなるため、 住民税そのものの減少額は53,919円になります。

税額控除が所得税の減少分を一部だけ吸収する場合は、所得税等の減少額も一部だけ残ります。 実際には、適用する税額控除の種類、計算順序、上限、住民税での取扱いを含めて確認します。 なお、65,000円の寄附では所得税の課税所得が1,950,000円を下回るため、 ケース1と同じ所得税率の切替えも含まれますが、住宅ローン控除後の所得税等は0円のままです。

4. 所得税額と住民税額を照合

所得税等の計算

項目 寄附前 65,000円寄附 減少額
寄附金控除額 0円 63,000円 -
所得税の課税所得 1,960,000円 1,897,000円 -
住宅ローン控除前の所得税 98,500円 94,850円 3,650円
実際に使われる住宅ローン控除額 98,500円 94,850円 3,650円
住宅ローン控除後の所得税 0円 0円 0円
復興特別所得税 0円 0円 0円
所得税等の合計 0円 0円 0円

住民税額と控除額の照合

項目 寄附前 65,000円寄附 変化
実際に使われる住宅ローン控除額 97,500円 94,850円 控除額2,650円減少
住民税の寄附金税額控除・基本分 0円 6,300円 控除額6,300円増加
住民税の寄附金税額控除・特例分 0円 50,269円 控除額50,269円増加
住民税の寄附金税額控除合計 0円 56,569円 控除額56,569円増加
差引所得割額 157,000円 103,081円 税額53,919円減少

所得税の課税所得は1,000円未満を切り捨てて計算しています。 住民税の寄附金税額控除は56,569円ですが、 住民税で使われる住宅ローン控除が2,650円少なくなるため、 差引所得割額の減少は53,919円です。 各控除額は、都道府県分と市区町村分をそれぞれ計算し、端数処理した後の合計です。

<所得税・住民税の軽減額 シミュレーション結果の帳表>
所得税・住民税の軽減額|ふるさと納税シミュレーション

5. 上限額の境界を確認

確認する金額 金額 確認結果
制度上の上限額(1円単位の計算値) 65,792円 住民税の特例控除額の20%上限で決定
本ソフトが表示する上限額 65,000円 1円単位の計算値から千円未満を切り捨て
次の千円単位の金額 66,000円 1円単位の上限額65,792円を超える

ここで確認しているのは、所得税の40%上限、住民税基本分の30%上限、 住民税特例分の20%上限のうち、最も低い金額です。 この例では20%上限が先に到達します。

このケースのポイント: 上限額65,000円は制度上の20%上限から決まる金額です。 所得税の減少が住宅ローン控除に吸収され、 住民税でも住宅ローン控除が2,650円少なくなるため、自己負担額は11,081円になります。
ふるさと納税_住宅ローン控除がある場合のシミュレーション結果