鹿谷会計/鹿谷総研

ケース1 寄附で所得税率が変わる場合

顧問先からの質問 ふるさと納税は、上限額以内なら自己負担額が2,000円以内になると聞いていました。 ところが、本ソフトが表示した上限額113,000円を寄附すると、 自己負担額が12,311円になります。計算が間違っているのでしょうか。
ふるさと納税_寄附で所得税率が変わる場合のシミュレーション結果

1. 数値例と計算結果

営業等の所得4,350,000円、寄附前の所得税の課税所得3,310,000円の例です。 この例では、住民税の特例控除額の20%上限によって、制度上の上限額が決まります。

計算に使用した主な金額 金額・割合
営業等の所得 4,350,000円
基礎控除(所得税/住民税) 1,040,000円/430,000円
寄附前の課税所得(所得税/住民税) 3,310,000円/3,920,000円
住民税の特例控除割合 69.580%
制度上の上限額(1円単位の計算値) 113,957円
本ソフトが表示する上限額(千円未満切捨て) 113,000円
寄附額 所得税等の減少 住民税の減少 税金の減少額合計 自己負担額
113,000円 12,354円 88,335円 100,689円 12,311円

自己負担額は、113,000円-100,689円=12,311円です。 本ソフトの上限額は、法令上の控除上限から求めた金額であり、 自己負担額が2,000円以内に収まることを保証する金額ではありません。

 
<ふるさと納税上限額/自己負担額 シミュレーション結果の帳表>
ふるさと納税上限額/ふるさと納税自己負担額|シミュレーション帳表

2. 会話で確認

顧問先 上限額113,000円より多く寄附していないのに、 なぜ自己負担額が2,000円を超えるのですか?

鹿 谷 「上限額以内なら自己負担額は2,000円」という説明は、 寄附金控除の全額について同じ所得税率の効果が生じることなどを前提にした目安です。 この例では、寄附金控除の途中で所得税率が20%から10%へ変わるため、 その前提どおりにはなりません。

顧問先 113,000円は、本当に制度上の上限額以内なのですか?

鹿 谷 はい。1円単位の計算値は113,957円です。 本ソフトは千円未満を切り捨てて113,000円と表示しており、 この金額は住民税の特例控除額の20%上限以内です。

顧問先 それでも自己負担額が12,311円になる理由を、もう少し詳しく教えてください。

鹿 谷 寄附前の所得税の課税所得は3,310,000円です。 所得税率20%の効果があるのは、3,300,000円を超える10,000円分までです。 113,000円を寄附したときの寄附金控除額は111,000円なので、 残りの101,000円分には主に所得税率10%の効果しか生じません。

顧問先 住民税側で、その不足分を補ってくれないのですか?

鹿 谷 住民税の特例控除割合69.580%は、 控除対象額の全額について所得税等が20.420%減る前提で計算されます。 実際には途中から所得税等の減少割合が10.210%になるため、 住民税を合わせても不足分を補いきれません。

顧問先 つまり、上限額の計算と自己負担額の計算は別に確認する必要があるのですか?

鹿 谷 はい。本ソフトの上限額は、所得税・住民税の法令上の控除上限から求めます。 実際の自己負担額は、寄附前後の最終的な所得税等と住民税を比較して確認します。

3. ずれが発生する流れ

順序 確認内容 この例の結果
1 寄附金控除額を求める 113,000円-2,000円=111,000円
2 所得税率20%の効果がある部分 課税所得3,310,000円から3,300,000円までの10,000円分
3 所得税率10%の効果になる部分 111,000円-10,000円=101,000円分
4 住民税の特例控除 全額に20%の所得税率が使われる前提の69.580%で計算
5 最終結果 税金の減少額100,689円、自己負担額12,311円
住民税の基本分10%が原因ではありません。 住民税の特例控除では一つの所得税率を使う一方、 実際の所得税では寄附金控除の途中から低い税率の効果になることが、ずれの原因です。

寄附前の課税所得が1,950,000円、3,300,000円、6,950,000円、9,000,000円、 18,000,000円または40,000,000円の近くにある場合も、同じ確認が必要になることがあります。

4. 所得税額と住民税額を照合

所得税等の計算

項目 寄附前 113,000円寄附 減少額
所得税の課税所得 3,310,000円 3,199,000円 -
基準所得税額 234,500円 222,400円 12,100円
復興特別所得税 4,924円 4,670円 254円
所得税等の合計 239,424円 227,070円 12,354円

住民税の減少額

項目 113,000円寄附
住民税の寄附金控除・基本分 11,100円
住民税の寄附金控除・特例分 77,235円
住民税の減少額合計 88,335円

所得税の課税所得は1,000円未満を切り捨てて計算しています。 住民税の控除額は、都道府県分と市区町村分をそれぞれ計算し、端数処理した後の合計です。

<所得税・住民税の軽減額 シミュレーション結果の帳表>
所得税・住民税の軽減額|ふるさと納税シミュレーション

5. 上限額の境界を確認

確認する金額 金額 確認結果
制度上の上限額(1円単位の計算値) 113,957円 住民税の特例控除額の20%上限で決定
本ソフトが表示する上限額 113,000円 1円単位の計算値から千円未満を切り捨て
次の千円単位の金額 114,000円 1円単位の上限額113,957円を超える

ここで確認しているのは、所得税の40%上限、住民税基本分の30%上限、 住民税特例分の20%上限のうち、最も低い金額です。 この例では20%上限が先に到達します。

このケースのポイント: 上限額113,000円は制度上の20%上限から決まる金額であり、所得税率が途中で下がるため、実際の自己負担額は12,311円になります。
ふるさと納税_寄附で所得税率が変わる場合のシミュレーション結果