ふるさと納税の上限額を正確に計算できるソフト
ソフトを作った理由
鹿谷会計の顧問先の正確な上限額を算定する必要性が増えてきました。
 ふるさと納税がスタートしたのは今から18年も前の2008年5月です。
 18年も経ってなぜ今更こんなソフトを作ったのか、その理由について説明しておきたいと思います。

 私(代表の鹿谷)は当初こういった制度についてあまり関心がありませんでした。
 実際、確定申告書を見ても多額のふるさと納税をしている顧問先はそれほど多くなかったように記憶しています。 それが今では寄附金額が全国で1兆2700億円(令和6年度)を超え、寄附件数も5800万件を超えています。
 それに呼応するように我々の顧問先でも最近はかなり増えてきたのです。

 私の事務所は資産税に特化しているため全ての顧問先が不動産オーナーです。
 ところで不動産所得というと毎年の所得金額はほとんど変わらないように思われるかも知れませんが、実情はかなり違っています。
 大規模修繕があれば1000万円単位で変動しますし、個人所有だったものを法人化しますと当然ながら個人の不動産所得はビックリするほど減少します。

 またアパートやマンションを建て替える時は更に大きく所得が変動します。立退料に始まり、最近では解体費が高騰している関係上、RCであれば5~6千万円になることも珍しくありません。
 また建て替え期間中は収入がゼロになりますのでトータルでは驚くほど所得が激減するのです。
 加えて我々の事務所の顧問先では相続税対策のために区分マンションを売買することもよくありますが、昨年から今年にかけて以前に購入した物件をガンガン売却しています。
 このようなことから、ふるさと納税の上限額を計算する時はかなり慎重にならざるを得ないのです。

 納税することは仕方ないとしても政治家や官僚の不祥事を見るにつけ、少しでも寄附の返礼品で取り返してやろうとの思いが強くなってきた気がします。私自身、今ではそれなりの税金を払うようになってきたので同じ思いです。
 要するに我々の事務所自体が正確な上限額を算定する必要性が増えてきたというのが、そもそもの開発理由です。
ふるさと納税の正確な上限額を計算できるソフトがありませんでした。
 ところで税理士の皆様方はふるさと納税の上限額をどのように計算されていますか?
 給与所得や事業所得だけであればそれほど難しくありませんが、分離課税があったり住宅ローン控除などがあると突然ワケが分からなくなるのではないでしょうか?
 特に年末調整の忙しい時期にふるさと納税の上限額を計算してほしいなんて言われたりすると勘弁してほしいというのが正直なところだと思います。

 そこでほとんどの場合、お客様自身が「ふるさと納税のWEBサイト」でシミュレーションしているのではないかと思います。
 ところで、こうしたWEBサイトを見ると、「シミュレーション結果は概算です。正確な控除上限額を知りたい場合は、お住いの自治体や所轄の税務署、税理士等にお尋ねください」といった言葉で体よくスルーされています。

 それではと自治体のWEBサイトを見ると、住民税の申告書を作成できるシステムが用意されているところはありますが、それはあくまで住民税に限定されていますし、税務署は国税を担当しているので所得税のことは分かりますが、住民税は管轄外です。

 また税理士でもチョット複雑な事例だとお手上げではないでしょうか? 税理士の試験科目に住民税はありますが、合格者数は毎年数十人ほどですし、住民税の申告をする機会は少ないので住民税に詳しい方はそれほど多くないような気がします。

 要するに現状では正確にシミュレーションできるソフトが見当たらないこと、税理士もそのようなソフトがあれば助かるのではないかと思い、それなら当社が開発しようと考えた次第です。
長男が我が社に入社することでクラウド版ソフトを開発する体制ができました。
 当社はもともと建設会社や不動産会社の方が地主にアパートやマンションの建設を提案するときに必要となる事業収支計算システムを中心にソフトを開発・販売してきました。
 ただし今までのソフトはクラウド版ではなかったので、自分のパソコンにソフトをインストールする必要があります。クラウド版であればソフトをインストールすることなく、ネットでログインすればすぐにでも使用できます。
 いくら正確に計算できるソフトを開発してもインストール版では顧問先の社長や従業員がご自身でシミュレーションすることは現実的ではないため、それほど普及しないと考えていました。

 そうこうしている内に長男が我が社に入社することになったのですが、税務の仕事にはあまり興味を示さなかったこと、前に勤務していた監査法人でソフト開発もやっていたことから当社でも引き続きソフト開発をやってもらうことにしたわけです。
 今では彼を中心として以前から当社でソフトを開発してきた社員に加えて私の妻の3人体制で取り組んでいます。
 「年を取った主婦にできるの?」、と不思議に思われるかも知れませんが、これが意外と活躍しているのです。
 私がエクセルで作った入力画面や帳表を基にHTMLなどでWebページを作っています。もう20年以上の実績があります。

 彼らの机の上には複数のパソコンが置かれているのですが、パソコンに映し出されている画面には目も眩むほど細かいプログラムが所狭しと並んでいます。
 プログラムですからもちろんアルファベットです。どう考えても会計事務所の光景ではありません。
 もちろん他の社員のパソコンには通常の会計ソフトや申告書のソフトが映っていますが・・・。

長男のデスク

苦労の連続だった「ふるさと名人」の開発
  ご存じのように、ふるさと納税により寄附をしますと、所得税では所得控除により税額が減額され、住民税では所定の計算式により求めた額が税額から控除される仕組みになっています。
 つまり所得税と住民税の両方に関係するので両方の税法を理解した上でソフトを開発する必要があります。
 ところで所得税や住民税の申告書を作成するソフトであれば国税庁から提供されている帳表をソックリそのまま真似ればいいのですが、今回のようにふるさと納税の計算過程が知りたい場合にはどこにもないので自作するしかありません。
 そこで何か手掛かりがないか調べたところ市販されている住民税の解説書に計算の仕組みが書かれていました。具体的には次の2冊です。
  〇「個人住民税 実務の手引」(公益財団法人 東京税務協会)
  〇「住民税 計算例解 市町村税務研究会編」(ぎょうせい)
 開いてみると、いずれも寄附金税額控除に関して1問ずつ紹介されています。ふるさと納税だけでなく通常の慈善団体や学校法人への寄附金も問題に含まれており、何度も解説を読むことで少しずつ理解できるようになりました。

 ただし、いずれも1問ずつなのでさすがにこれだけでソフトが作れるわけがありません。
 そこで専門学校の税理士試験のオンライン授業を申し込み、本格的に勉強を開始。
 だんだんと住民税の世界が理解できるようになりました。これ以外にもTACや大原が出している問題集や過去問も全て揃えました。

 ところが以上は住民税だけの話。もう一方の所得税は確定申告こそ40年以上の実績がありますが、ソフトを開発するためにはあらゆる事例を想定する必要があります。
 取りあえず本屋やネットで確定申告書の記載例が載っている書籍を何冊が購入し勉強しましたが、どうも中途半端な気がして、住民税と同じく専門学校の税理士試験のオンライン授業を受講しました。
 ただし、ふるさと納税の計算にはあまり関係のない税理士試験の問題が多く、それほど時間をかけて勉強したわけではありません。

 ところで税理士であれば当然お分かりのように所得税申告書の構成は次のようになっています。
  第一表・・・総合課税
  第三表・・・分離課税
 そして分離課税がある場合にはこの2つの帳票を苦し紛れに連結して計算するようになっているのですが、この様式だと特に住民税の寄附金税額控除を求める場合の総所得金額等の数値を求める流れが分かりづらいので、途中から第一表と第三表を連結するように変更しました。
 つまり収入金額、所得金額とも総合課税の次に分離課税を続けて記載する方式です。
 この方式は所得税や住民税の税理士試験の問題と同じ構成ですが、これでインプット表や帳表がかなりスッキリしました。

 また特徴の第4に書いている「寄附金額別損得シミュレーション」という帳表を途中から追加しました。
 上限額を中心に上下30区分の寄附金額に応じた実質負担額を計算・表示しているのですが、このような帳表があれば実際に寄附する額を決めやすいのではないかと思い追加しました。
 
 いずれにしてもこうした苦難の末、ようやく完成したのが今回発売することになった「ふるさと名人」です。
 「ふるさと納税の使用方法」にも書いたように、このソフトは会計事務所の顧問先の方が直接ご自分のケースでシミュレーションできます。

所得税や住民税の仕組みは非常に複雑ではありますが、最近はe-TAXで申告する方が増えてきたので少しずつ慣れてきたのではないでしょうか?
 したがって、この「ふるさと名人」も少し勉強すればすぐに理解できるようになります。
 帳表は表紙を含めて全部で8枚。
 これらの帳表をジックリ読んでいきますと、ふるさと納税の仕組みを完璧に理解できるハズです。
 税金一般の勉強のためにも大いにご活用ください。