生前贈与による相続税対策を正確にシミュレーションするソフト
ソフトを作った理由
贈与の仕組みが極めて複雑になり、専用ソフトがないとお客様に間違った贈与プランを提案する恐れがある。
 ご存じのように、暦年課税については相続開始日に応じて贈与加算期間が変動し、最長7年間まで遡って贈与した額が相続財産として加算されることになりました。
 それも加算対象期間に贈与した額は基礎控除以下であってもすべて加算する必要があります。
 例えば、次の事例を考えてみましょう。

<事例:いずれも2031年以降の贈与のケース(最長7年間)>
1年前の贈与 100万円 贈与の申告なし
2年前の贈与 150万円 贈与の申告あり(贈与税4万円)
3年前の贈与 90万円 贈与の申告なし
4年前の贈与 10万円 贈与の申告なし
5年前の贈与 5万円 贈与の申告なし
6年前の贈与 80万円 贈与の申告なし
7年前の贈与 50万円 贈与の申告なし
合 計 485万円

<生前贈与加算額>
イ.4年前から7年前までの加算額 (10+5+80+50)-100=45
ロ.1年前から3年前までの加算額 100+150+90=340
合 計 (イ+ロ) 385


 4年前から7年前までは贈与額の合計から100万円控除しますので45万円。
  それに1年前から3年前までの合計340万円を足しますと385万円となり、この額が加算されるわけです。
 ところで、この事例では2年前の贈与額は150万円ですから基礎控除110万円を超えているため贈与税の申告が必要です。したがって申告書の控えを保存しておけば特に問題ないでしょうし、相続が発生した時、税務署に問い合わせることもできます。

  ところが、それ以外の贈与はどうでしょうか? 
  110万円未満なので贈与税の申告は必要ありません。当然ながら税務署に問い合わせても分かりません。
  この事例では5万円や10万円の贈与も載せましたが、こんな少額なものまで過去7年に亘ってノートか何かに記載し続けることになるのでしょうか? 

  以上は暦年課税の説明ですが、相続時精算課税については2024年以降、110万円の基礎控除が認められるようになりました。それも申告不要とのこと。
  だからといって証拠を残すことは当然ながら必要です。
  国としてはこちらの制度を推奨しているようですが、資産家の場合には暦年課税の方が有利な場合があるので、いずれにしても専用ソフトが必要となるのです。

本格的な最適贈与額をシミュレーションできるソフトが無かった
  そこで何か便利なソフトがあるのかネットで検索してみたのですが、私が考えていた時系列でシミュレーションできるものはありませんでした。
  贈与対策がメインのソフトであるにもかかわらず時系列で生前贈与加算を考慮に入れた計算ができないのであれば意味がないように思えるのですが…。

 我々の事務所には「TAXプランナー」というマイクロソフトのAccessで作った本格的なシミュレーションソフトはあるのですが、このソフトは新規のお客様などに本格的な相続対策を提案するときに使うものです。したがって今年の贈与額はいくらにするかといった軽い提案の場合を想定していません。つまり気軽には使えないのです。

 そこで今まで贈与をメインとした本格的なシミュレーションソフトは作ったことがないので、この際、新規に作ってみようと開発をスタートしたわけです。

長男が我が社に入社することでクラウド版ソフトを開発する体制ができた
 「ふるさと名人」の箇所に詳しく書いたのですが、既存のソフトを含め全てのソフトをクラウド版にする理由はソフト開発をする体制が整ってきたことにあります。

 具体的には
  ➀クラウド版ソフト開発に詳しい長男が我が社に入社したこと、
  ➁生成AIのソフトの性能が格段にアップし、クラウド版ソフトが比較的スムーズに開発できるようになったこと、
 が理由です。

 またクラウド版であれば、今回販売する「贈与名人」や「ふるさと名人」と同じように、ソフトのユーザーである会計事務所の顧問先の方や不動産業者のお客様などが直接ソフトを使えるという大きなメリットもあります。


長男のデスク

途中で挫折した「贈与名人」の当初の企画
  新しくソフト開発をスタートする時はいつも代表である鹿谷(私)が入力画面と帳表をエクセルで作り、ソフト開発者がAccessやphp(クラウド版のソフトを開発する場合の代表的な開発言語)などを使って作りこんでいくのですが、この贈与名人は見かけ以上に大変でした。その理由は次の通り。

 私は若い頃から、状況が変わったらどうなっていくのだろうという関心が人一倍高く、これまでにも様々なシミュレーションソフトを作ってきました。例えば、「3代の相続で財産はほぼ無くなる」との格言が本当に正しいのか実証するため、表計算ソフトができると早速トライしたことがあります。

 細かいことは忘れましたが、所有する土地の面積は一定で、相続で分家に渡す土地はカウントしないという前提に立ち、土地の上昇率をいろいろ変えながら計算したところ、地価の高い所では確かに土地の面積が10分の1も残らないケースがあったように記憶しています。                
 今回の贈与名人の開発に当たっても、「3世代にわたり、①何もしないで相続を繰り返した場合と、②贈与と相続を繰り返した場合、で結果にどのような違いが生ずるかシミュレーションできるソフト」をコンセプトに開発をスタートしました。
 帳表の作成まではどうにか終わったのですが、インプット表を作成していた段階で挫折したのです。
 できないことはないのですが、ものすごく時間を要する気がして断念したわけです。
  相続時精算課税だけなら全て生前贈与加算なのでそれほどでもないのですが、暦年課税の場合には生前贈与加算の期間が変動するため非常にややこしいのです。これを2次相続まで入れると4回繰り返すことになります。気が遠くなる気がしませんか?         

 開発に時間がかかるということは開発費がそれだけ増えるわけで資金ショートしてしまえば一巻の終わり、他に作りたいソフトが山のようにあることに鑑み、ある日、突如、軌道修正して直近の被相続人予定者だけを想定したものに変更した次第。これだけでも実務では相当程度カバーできるのではないかと思います。         

 なお、次回のバージョンアップでは贈与履歴を管理する機能を先に追加する予定です。